カルマ ~500年の物語~
カルマ ~500年の物語~
これは、私自身の輪廻転生の物語です。
時は戦国時代。
その時、私は上級武士であり大きな屋敷に住み何人もの侍女を雇っていました。
若き主であった私は、侍女たちに大変人気がありました。
彼女らの中に私を強く恋い慕う一人の女性がおりました。しかし、彼女にとって私は身分の違う相手。それは叶わぬ恋でした。
彼女は自分の思いを打ち明けたい気持ちで一杯でしたが、それを堪えながら私に仕えていました。
ある日、武士であった私はついに戦場で討たれて帰らぬ人となったのです。
私の戦死を知った彼女は悲しみに暮れます。我を失った彼女は自分の喉を刃物で突き、後追いをしてしまったのでした。
このことが、以降約500年に渡る物語の始まりとなります。
私と彼女が輪廻転生の中で次に出会ったのは、清王朝時代の中国でした。私は田園の広がる地域で暮らしておりました。
この生での私の職業は医師であり、ある病気の新しい治療法を研究していました。
ついにその研究が最終段階に入った時に、私は臨床試験を行なうために被験者となる患者を必要としていました。
その時に手を挙げたのが、当時その病を患っていた彼女でした。
このことがきっかけとなって、彼女は前生では叶わなかった望みを成就させ私と恋人同士の仲となったのです。
ただ、私の開発した新しい治療法は、患者に対してある部分で苦痛を与えるものでした。
最初のうちは彼女に対して新しい治療法を施していたものの、苦痛に耐えている彼女の顔を見ているうちに私は居たたまれなくなります。
私は彼女を愛していたがためにその治療を途中で中断。苦痛の少ない従来の治療法に切り替えてしまったのでした。
その後、彼女の病状は悪化して死んでしまいます。
最初の計画通りに新しい治療法を続けていれば彼女は助かったかもしれない……、私は自分の選択に対して酷く後悔し、懺悔しながらその一生を送ったのでした。
それから100年程が経過します。ここから今生の話です。
彼女は孤独な女性でした。母親は彼女が赤ん坊の時に家出し、父親からは暴力を受けました。そして彼女は幼き日に親族の家に引き取られて18歳までを過ごしたのでした。
大人になってからの彼女は、一人で東京に出て銀座や歌舞伎町でクラブ勤めなどをしながら生活をしていました。
年齢が30歳を越えたことを機に普通の会社務めをしようと思い立ち、ある会社の営業部に入社します。
そこで出会ったのが私でした。魂の再開です。
彼女と私は所属部署が違いましたが、私は他人の苦労話に弱い性格で、時々彼女の身の上相談に乗るようになりました。
そして私たちはほとんど交際期間も経ないうちに磁石で引き寄せられるようにして同棲、結婚という過程に至ったのです。
結婚してから何年か経過した時、彼女は難病を発症します。私たちには同居している別の家族がいなかったため、私は一人で彼女の介護をしなければなりませんでした。
彼女の病気は直接命に関わるものではありませんでしたが、現代医学では治療が不可能で、普通の社会生活を営むことが徐々に難しくなっていくものでした。
私はあらゆる名医や代替医療の専門家を探し尋ねて彼女の治療のためにサプリメントや寝具、ヒーリングなどに大金を投入しました。しかし、いずれも効果が見られませんでした。
こうした介護生活で10年という歳月が経過しました。私の心身も疲弊していた頃、子供時代の彼女を世話していた人たちが現れて、その中の一人が私に言います。
「あなたは彼女のために大変な苦労をされました。本当にごめんなさいね。これからは血縁の者たちが協力して彼女の世話をします。」
自分が迷惑を掛けていたのでもないのに、私に対して「ごめんなさい」と言ってくださった長老の女性の言葉が心に強く残っています。
妻とは長い間疎遠になっていた人たちが、私たちの前に突然に姿を現した印象がありました。この時に私が初めて会った人もいました。人生の転換期にはこのような急展開の引き寄せということもあるのでしょう。
それは私にとって地獄に仏でした。しかしその反面で、この時が辛い別れのタイミングでもありました。私はやれるだけのことはしたのだから仕方がないと考えて運命を受入れ、彼女と離別する決意をしたのでした。
私は子供時代、ポスターなどで田園の風景写真を見ると何故かいつも悲しい気持になりました。大人になるとその感傷は無くなりました。
当時、そのことを自分の母に話したことがあり、「きれいな風景を見ると誰でも感動するんだよ」と言われました。しかし、私はその説明にはどうも納得が出来なかったのです。
後に、私の過去生について二人の霊能者から同じような話を聞いた時にその理由が分かりました。
彼女の病をなんとか自分の力で治してやろうという一心で様々な治療法を試したがうまくいかず、最終的に別れを決意した私の体験は、自分が医師だった過去生において病死した彼女に執着し過ぎたカルマを終わらせるプロセスとして必要だったのでしょう。
一方で彼女は、親からもらった自己の命を安易な動機で断った過去生のカルマと向き合う必要がありました。そのために今生では親の愛に恵まれない体験をし、なおかつ人生の途中で重い病を患って私と別れる体験をしなければいけなかったのだろうと思います。
カルマとは、転生輪廻の中で解消されていない執着や思い癖が自分の課題として表面化してくる現象なのだろうと思います。それは魂の成長のためにあるのでしょう。
カルマは受け入れたり嫌悪したりする性質のものではなく、その意味を理解して昇華すべきものなのです。
バシャールは、カルマとはバランスのことだと言います。
陰と陽、男性性と女性性、与えることと受け取ることといったように宇宙のバランス調整作用としてカルマはあるのです。
カルマの意味について -バシャール
皆さんの多くの世代にとって、カルマというコンセプトは、罪、報い、報復と非常に関連してきましたが、実際にはそうではありません。
カルマとはバランスのことであり、皆さんが放っている波動、考え、態度が、望むものや心底なりたい自分とのずれを認識するものです。
皆さんが迷って自然な自分、真の自分、望ましい波動を示す境界線の外側へとずれているとき、その感情に気づくようにするメカニズムなのです。
あなたの魂のバランスを取るために、自らカルマを予め決定しておくというわけです。
そしてあなたが自分で決定したカルマをどのように調理してどのように発展させるかはあなた次第なのです。
(やしろたかひろ)